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【成功談よりも失敗談】

スーパーバイザー 倉林秀光

 

戦国時代の武将が現代にタイムスリップしたとします。

現れたのは豊臣秀吉。

 

そこで、あなたに質問。

秀吉と会って、一緒にお酒を酌み交わせるとしたら、いつの時代の秀吉がいいですか。

 

信長から「猿!」と呼ばれ、コマネズミのように動き回っていた木下藤吉郎時代の秀吉がいいですか?

それとも、晩年、黄金の茶室を築き、太閤殿下と呼ばれたころの秀吉がいいですか?

 

たいていの人は、晩年の太閤秀吉よりも、木下藤吉郎時代の秀吉に好感を寄せ、一緒にお酒を飲みたくなるのではないでしょうか。

天下を統一して、権力を振りかざし、自慢話しかしない秀吉よりも、“人たらしの名人”と呼ばれていたころの秀吉に興味・関心を寄せるのではないでしょうか。

 

本にも同じことがいえます。

成功者と呼ばれる人が本を出そうとするとき、自分自身の体験談を記そうとする人が少なくありません。

 

その中には成功談もあれば失敗談もあります。

 

このとき、編集者が一番に目を向けるのは、「今、著者がどれだけ成功したか?」「どれだけの地位、どれだけの収入があるか?」ではありません。

 

「かつて、どういう失敗をしたか? どれだけ苦労をしたか?」

「それをどのように克服していったのか?」

 

ここに目を向けます。

 

それは読者も同じこと。

あなたが成功者の書いた「成功するためのマニュアル本」を読もうとするとき、成功をおさめた今の状況よりも、そこに至るまでのプロセスに興味・関心を示すと思います。

同時に、苦労したこと、失敗したことに共感を示すと思います。

 

拙著『イヤな仕事は絶対するな!』(サンマーク出版)・『あなたを輝かせる「天職」はある

』(すばる舎)で述べている私自身の体験談がまさにそうでした。

 

この二冊の本で記述している私の体験談の大半は、「何度転職してもうまくいかなかった」「また、会社をクビになってしまった」という苦労談・失敗談です。

成功談もまったく記していないわけではありませんが、「そんな自分でも天職中の天職に就いたおかげで、ようやく人生がうまくいくようになった」「ポジティブ人間に生まれ変わることができた」程度です。

 

でも、だからこそ、編集者は着目してくれたのです。

読者は共感を示してくれたのです。

 

したがって、本を出そうと考えている人は、成功談なんか記さなくてもいい。

苦労談・失敗談をどんどん記すべきです。

それも半端ではないくらいの苦労談・失敗談がベター。

それがあるからこそ、それを克服した自分のノウハウ=強みが引き立つようになる。

 

そうしたことを意識して構成案を作成すれば、編集者の見る目も違ってくることうけあいです。

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