本の質を重視する
スーパーバイザー 倉林秀光
以前、俳優の故丹波哲郎さんとお仕事をご一緒させていただいたことがありました。
仕事をするにあたって、下調べ・予習を兼ねて、丹波さんの講演(テーマは死後の世界)を聞きにいったのですが、それは講演終了後の質疑応答の際に起こりました。
受講生の一人があることを質問すると、丹波さんは要点のみを手短に述べ、つづけて次のように言ったのです。
詳しいことは、本で説明しています。
本をお読みになって、参考にしてください。
はい、他に質問のある方はいらっしゃいますか?
丹波さんはご自身の本のPRをするために、そう言ったわけではありません。
「本の質を重視したい」という考えでいたのです。
ところが、本を出したい人を見ていると、その逆の考えの人(なかでも、セミナーの講師を務めている方)が多いような気がしてなりません。
自分の名前で本を出して、ノウハウの一部を公表したい。
そうすれば、関心を持ってくれた人は、自分のセミナーに来てくれるようになる。
そういう考えているのです。
しかし、はっきりと言いましょう。
出版社の編集者は、そのへんにものすごく敏感です。
そういう魂胆があれば、一発で見抜かれ、その時点で企画は却下されてしまいます。たとえ、完成度の高い企画書&構成案を提出したとしてもです。
前にも述べましたが、本は本で完結していなければなりません。
著者は読者に対して、すべてのノウハウを伝授しなくてはなりません。
仮に著者がセミナーの講師だとしても、「本ですべてをさらけだしたから、セミナーへの参加不要です」と言い切れるだけの自信がなくてはなりません。
ましてや、「本のつづきはセミナーで」などというのは論外!
あなたにはそれだけの覚悟がおありですか。
最後に丹波哲郎さんが私におっしゃってくださった言葉を紹介しましょう。
倉林さん、
本当はね、講演なんかしなくてもいいんですよ。
講演よりも、はるかに詳しいことを本で書いているからね。