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【出来の悪い中学生が読んでもわかる文章を書く】

スーパーバイザー 倉林秀光

 のっけから、皆さんにお尋ねします。

 √9はふつうの数字にするといくつになりますか?
 √9×√9はいくつになりますか?

 学校では習ったものの、理数系の人でもない限り、すぐに答えが出てこない人もいるかもしれませんね。

 √9は普通の数字にすると3。
 √9×√9は、3×3だから、9になります。

 なぜ、こんな話をしたかというと、本を書くとき、「√9×√9」のような、難解な表現を用いる人がたまにいるからです。

 そう、これ見よがしに、業界の人しか知らないような専門用語や学術用語を使おうとする人がいるのです。

 しかし、読者がいちばん嫌がるのは、こうした専門用語や学術用語が入り混じった文章です。

 考えてもみてください。一般書を開いたとき、√9×√9みたいな難解な書き方がされていたら、読む気が失せてきませんか。

 だとしたら、√9×√9みたいな書き方はしないこと。

 はじめから、3×3みたいに書くこと。

 専門用語や学術用語はできるだけ使わないようにし、出来の悪い中学生が読んでもわかる文章、理解できる内容にするのです。

 そう、ちょっと失礼な言い方になりますが、出来の悪い中学生が読んでもわかる文章、理解できる内容、これが大事なのです。

 みなさんが中学生の頃、勉強がからきし苦手なクラスメイトが一人や二人いたと思います。
 英語も数学も国語もからきしダメ。クラスでもおそらく最下位の成績。そういう出来の悪い中学生をイメージして、文章を書くのがちょうどいいのです。

 言い換えると、専門用語や学術用語を、誰もがわかる別の言葉に置き換える工夫をこらすようにするのです。

 たとえば、元寇(げんこう)という言葉をあなたはご存知ですか? 

 学生時代、歴史の教科書に出てきた言葉ですが、おそらく忘れている人のほうが多いと思います。

 そのため、歴史音痴の人からすれば、「元寇で日本は危機を迎えたが、神風によって救われた」という一文を読んだだけでは、的確に内容が理解できず、頭に疑問符がつくと思います。

 元寇とは、「鎌倉時代の1274年と1281年に、当時、蒙古と呼ばれていたモンゴル帝国によって2度にわたり行われた艦隊による日本侵攻」のことをいいます。

 だとしたら、出来の悪い中学生をイメージして、誰もがわかるように、

「鎌倉時代の中頃(もしくは13世紀の後半)、モンゴル帝国が2度にわたり日本に侵攻してきたが、大暴風雨によって危機を免れた」

 と記せばいいのです。

 どうです? これならば、出来の悪い中学生でも理解できるのではないでしょうか。

 文章はわかりやすさが一番! まずはこれです。

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