編集者は著者の「一芸」に注目する
Aさんという人がいます。
Aさんは今までにない「集客法」をテーマにした本を出版しようと方々の出版社に企画の売り込みを図りました。
ところが、どこからもゴー・サインをもらうことができません。
なぜでしょうか。それはAさんの肩書き・仕事内容に問題がありました。
Aさんは自称・経営コンサルタントですが、税理士の資格も持っていて、週に三回、知人の会計事務所で働いています。
また、ランドスケープ・アーキテクトの資格も持っており、週に二回、専門学校で造園のデザインについて講義しています。
肝心の経営コンサルの仕事は毎週土曜日に自宅で行っています。
実はここに問題があったのです。
Aさんの仕事ぶりは、一見、マルチに見えます。
しかし、編集者の視点は違いました。そうした一連のマルチ活動が、単なる「何でも屋」にしか映らなかったのです。
この人の本職は何?
いったい、何を売りにしているの?
いったい、何のエキスパートなの?
それが、いまいち、よく分からない。
そんな人がなぜ「集客」をテーマにした本を出すの?
こんな疑問符がつけば、当然、企画はボツになってしまいます。
編集者が著者に求めるのは、企画の中味の善し悪しだけではありません。
「著者はその道のエキスパートなのか?」
「その道のエキスパートだとしたら、どんな実績をどれだけ残したのか?」
そういったことに興味・関心を示します。
言い換えると、編集者は著者の「一芸」に目を向け、その「一芸」が企画の内容とかみ合っているかどうかを見極めたうえで、企画そのものを検討するのです。
「自分の名前で本を出したい」
「素晴らしいネタがあるので、それを本にして現わしたい」
そう考えている人は、こうしたことも念頭に置いて活動したいものです。