【本は出だしが勝負!】
スーパーバイザー 倉林秀光
映画制作の専門用語に「フック」という言葉があります。
フックとは、わかりやすくいうと、映画を観る人の心に冒頭からインパクトを与え、一瞬にして画面に釘付けにさせる技法のことをいいます。
映画は通常、「静」から「動」へと展開していくものですが、いきなり「動」をもってきて、そこから「静」 → 「動」へと展開させていくというものです。
代表的なのが、ジャッキー・チェンの映画です。
冒頭からすさまじいカーチェイスやカンフーアクションが繰り広げられたりしますが、あれなどはまさに「フック」を生かした好例といっていいでしょう。
私などは単純な人間ですから、それを観ただけで、「すごい。冒頭からこんなアクションが繰り広げられるということは、クライマックスの場面はもっとすさまじいんだろうなあ」と幾度となく思ったものです。
なぜ、こんな話をしたかというと、出版企画書の構成案を立案したり、ご自身で原稿を執筆する際、この「フック」の手法を意識していただきたいからです。
そう、本を読む人の心に冒頭からインパクトを与え、一瞬にして紙面に釘付けにさせる工夫をこらすようにするのです。
参考までに、天職の見つけ方をテーマにした拙著『あなたを輝かせる「天職」はある』の冒頭部分の一部を紹介しておくことにします。
あなたにとって、仕事がうまくいっていない状態とは、どんなときでしょう。
いろいろ挙げられると思いますが、もし、あなたの身近に次のような人がいたらどう思うでしょう?
あなたの「仕事がうまくいっていない状態」なんか、たいしたことのないように思えてくるのではないでしょうか。
――朝の通勤途中で便意をもよおし、駅のトイレに駆け込んだものの、個室が満員で、我慢できなくなり、たまらず小便器に脱糞。ほうほうのていで、会社にたどり着くも、社長からいきなり呼び出され、「おまえは今日でお払い箱だ」といわれてしまった……。
いきなり不浄な話で驚かれたでしょうが、さらにまた、その人がこんな状況にあったとしたら、あなたはもっとビックリするのではないでしょうか。
――不器用で飲み込みが悪いため、どんな仕事をやってもモノにならない。
――転職を三十回以上も繰り返したため、職歴が履歴書からあふれ出し、書くスペースがなくなってしまった……。
でも、ここで驚くのはまだ早計というものす。
その人が二十年以上経った今、いつも、次のような感情に満たされているとしたら、あなたはどう思うでしょう?
にわかには信じられないのではないでしょうか。
――人生を十分に楽しんでいる。毎日がワクワクする。
――なすべきときに、なすべきことをしている。
――仕事にものすごく生きがいを感じている。
――今の仕事こそ天職だと思っている。
実は、その人間こそが、他ならぬ、この私なのです。
(以下略)
さて、いかがですか。
自分の本を引き合いに出して言うのも何ですが、インパクトがあるでしょう?
そう、本は出だしが勝負なのです。