【チャーハンと筆跡診断】
スーパーバイザー 倉林秀光
古代中国にこんな逸話があります。
あるところに皇帝に使える料理人がいました。
その料理人が、ある日、うっかりしてご飯を炊くのを忘れてしまったことがありました。
手元には昨日の残りの冷めたご飯しかありません。
皇帝陛下は温かいご飯が大好きなので、冷めたご飯を出すわけにはいかない。
皇帝陛下は毎日決まった時間に食事をとるので、今からご飯を炊く時間なんかない。
どうしよう……。罰せられてしまう……。
すると、料理人の弟子がこう言いました。
「その冷めたご飯を玉子とからめて炒めて出したらどうでしょう」
料理人は弟子に言われたとおりに、冷めたご飯を玉子とからめて炒めて出したところ、これが大好評。
皇帝から「とても美味い」とお褒めの言葉を授かることができました。
これがチャーハンの始まりと言われています。
この話は本の出版にも少なからず参考になると思います。
私が最近プロデュースした『「字」を変えると人生はうまくいく!』(小山田香代著・三笠書房)がまさにそうでした。
この本のベースになっているのは筆跡診断です。
これまで筆跡診断をテーマにした本は何冊も出版されてきましたが、どれも学術的な見地で解説された実用書ばかりでした。
「同じようなアプローチで出版社に売り込んでも、企画はパスしないだろう」
そう考えた私は著者である小山田さんに筆跡診断について詳しく話を聞くことにしました。
すると、小山田さんいわく、
「私たちが普段何気なく書いている文字には、その人の性格や行動パターンといったものが現れています。自分では気がつかない深層心理の表れといってもいいでしょう」
「そうした手書きの文字を分析することで、今の自分の深層心理を知り、そのうえで文字の書き方を意識的に変えていけば、深層心理にも変化が生じ、性格や行動パターンも変わるようになります。それによって、性格も人間関係も仕事も何もかもが、自分の望む方向に変わるようになるわけです」
小山田さんの言葉を聞いた私はピーンとひらめくものを感じました。
筆跡を変えることで、性格も人間関係も仕事も何もかもが、自分の望む方向に変わるとしたら、「引き寄せの法則」とからめたらどうだろう。
筆跡診断をベースにした、今までにない自己啓発書として、出版社に企画を売り込むのも手かもしれない。
その結果、出版社も「これはおもしろいです」と大いに興味・関心を示してくれ、瞬く間に企画がパス。
こうして出版の日の目を見たのが『「字」を変えると人生はうまくいく!』なのです。
冷めたご飯しかり。筆跡診断しかり。
既存の要素を定められた角度から見ると、一定の尺度でしか物事が考えられないため、良いアイデアは浮かんできません。
しかし、まったく違った角度から見れば、冷めたご飯がチャーハンに、筆跡診断の実用書が自己啓発書に変身するように妙案が浮かぶ可能性があります。
一つのテーマやコンテンツをまったく違った角度から考察し、まったく違う要素を加味させる。
すると、斬新さに満ちたまったく別のテーマやコンテンツが生まれる。
こういう問題意識を持つことも、商業出版社から本を出す確率を高めるうえで大切なことなのです。