【外科医が教える美味しい料理を作るための包丁の使い方】
スーパーバイザー 倉林秀光
「餅は餅屋」ということわざがあります。
「餅は餅屋のついたものがいちばん美味い。その道のことはやはり専門家がいちばん」という意味です。
ひと昔前まで、出版物の著者も「餅は餅屋」が主流でした。
うつ病をテーマにした本の著者は、精神科医か心理カウンセラー。
セールスの極意をテーマにした本の著者は、トップセールスマン経験者。
成功法をテーマにした本の著者は、もちろん成功者。
ところが、この風潮が近年少しずつ変わりつつあります。
なぜかというと、ひとつに斬新さに欠けることが挙げられます。
たとえば、「美味しい料理を作るための包丁の使い方」というテーマがあるとします。
このテーマにフィットした著者候補といえば、たいていの人は料理人もしくは料理研究家を連想すると思います。
でも、そこには斬新さがありません。
料理の鉄人クラスの著者でも引っ張ってこないかぎり、本の売れ行きは期待できないと思います。
では、著者候補が「外科医」だとしたらどうでしょう?
編集者は「おおっ」と思わずうなってしまいます。
難易度の高い外科手術は、メスの使い方が決め手となる。
そこには緻密さと正確さが要求される。
メスと包丁の使い方に、何か共通点はないものだろうか?
共通点があったとしたら、それを料理に生かせないものだろうか。
緻密さと正確さを、美味しい料理づくりにつなげられないものだろうか。
どうです?
上記の話は私の想像ですが、そこには斬新さがありませんか?
料理を作らない人、包丁をあまり握らない人でも、興味をそそられるのではないでしょうか。
「餅は餅屋」でもちろんかまいません。
しかし、本を出したい人は、ストレート勝負にこだわるだけではなく、「餅は餅屋」をちょっとシフトしてみませんか。
そうすれば、編集者がうなるような素晴らしい企画が思いつくかもしれません。