生ハムメロン戦法
スーパーバイザー 倉林秀光
みなさんは生ハムメロンを食べたことがありますか。
私が初めてそれを目の当たりにしたとき、ものすごく興味をそそられました。
そして、実際に食べたとき、生ハムの塩っぽさとメロンの甘さが口の中で溶けあって、ちょっとした感動モノでした。
これがもし、生ハムとチーズのコラボだったらどうでしょう。
味の想像がつくため、それほど興味をそそられません。
メロンと生クリームのコラボもしかり。
これまた味の想像がつくため、それほど興味をそそられません。
しかし、生ハムとメロンというまったく異質なモノ同士の組み合わせは、初めて口にする人にとっては味の想像がつかないため、興味をそそられます。
だから食べてみたくなります。
このまったく異質なモノ同士を組み合わせる発想は、出版の企画にも同じことがいえます。
その典型がベストセラーを記録した『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』です。
あの本のタイトルが、『もし経営者がドラッカーの「マネジメント」を読んだら』、あるいは『もし起業家がドラッカーの「マネジメント」を読んだら』だとしたら、どうでしょう。
ありきたりすぎて、全然面白味がありません。
惹かれる要素は何一つありません。
しかし、「高校野球の女子マネージャー」という言葉が入ることによって、そこには意外性が生じます。
「高校野球の女子マネージャー」と「ドラッガー」はまったく異質な組み合わせのため、興味をそそられます。
味(本の内容)の想像はつきませんが、「食してみたい(読んでみたい)」という気持ちになります。
本のテーマを策定し、企画を立案するにあたって、異質なモノ同士を組み合わせる。
それによって、編集者の興味をそそらせる。
私はこれを「生ハムメロン戦法」と呼んでいますが、この「生ハムメロン戦法」を導入することも、商業出版社から本を出す確率を高めるうえで大切なことなのです。