持ちこみ原稿よりも出版企画書
スーパーバイザー 倉林秀光
「すでに書き終えた原稿を出版社に持ち込んだ場合、編集者は目を通してくれるでしょうか」
「私は本を出したことがありませんが、出版社にいきなり原稿を持ちこんでも大丈夫でしょうか」
こういう相談をたまに受けることがあります。
結論から言ってしまうと、今まで本を出したことのない人が、出版社に原稿を持ち込んでも、本になる可能性は極めて低いのが実状です。
なぜか? 理由はいたってシンプル。
編集者は取材、原稿整理、校正などに追われ、原稿に目を通す余裕がなかなかないからです。
しかも、編集者はただでさえ目を酷使しています。それなのに、持ちこみ原稿に目を通すとなると、これはもう苦痛以外の何物でもありません。
ただ、中には、有望な新人著者探しに熱心な編集者もいて、そういう人は目を通してくれることもあります。
しかし、それでも「残念ですが……」「ちょっとウチでは厳しいかと思います」ということで、返却されるケースが圧倒的です。
なぜか? 持ちこみ原稿というのは、ある意味すでに完成された原稿であるため、編集者の意向と内容が食い違っていた場合、原稿の直しようがないからです。
そのため、却下せざるをえなくなるのです。
その点、出版企画書なら、どんなに忙しい編集者であっても、数分で目を通すことができます。
著者略歴の項目を読めば、その人が何をやっている人か、どういう強みを持っているかが瞬時に分かります。
企画意図を読めば、本の概要も瞬時に把握できます。
構成案を読めば、本がどういう流れで展開していくのかということも、瞬時に理解できます。
また、これがもっとも大切なことですが、編集者の意向と内容が食い違っていたとしても、この段階ならば、いくらでも修正が可能です。
「ここはこうすればいい」
「この章の代わりに、こんなテーマの章を設けたらいいのではないか」
「この章で述べようとしていることを、もっと前面に打ち出したほうがいい」
といったように……。
おしなべて言えば、持ちこみ原稿よりも、出版企画書のほうが大事なのです。
出版企画書をキチンと作成することが、出版への近道となるのです。
原稿を作成するのは、その後からでも遅くはないのです。