【ヤマアラシ・ジレンマ】
スーパーバイザー 倉林秀光
ドイツの哲学者ショーペン・ハウエルの創作寓話に「ヤマアラシ・ジレンマ」という作品があります。
寒い冬の夜、少しでも暖まろうと二匹のヤマアラシが身を寄せ合おうとしました。
しかし、ヤマアラシの身体にはトゲがあります。
そのため、近寄りすぎると、お互いの身体のトゲが相手を傷つけ、そうかといって離れすぎると、今度は寒くなります。
いろいろと悩んだ末、二匹のヤマアラシはようやく傷つけずに暖め合える距離を発見した……というストーリーです。
人間も同じで、離れすぎず、近寄り過ぎずの、適度な距離感を保つのが一番望ましいと、ショーペン・ハウエルは指摘するのです。
出版プロデュースという仕事も同じです。
言うまでもないことですが、企画の立案から本の刊行にいたるまで、出版プロデューサーは著者と二人三脚でプロジェクトを推進していかなくてはなりません。
その過程において、著者に近寄りすぎると、どうなるか?
著者目線、すなわち一定の尺度でしかモノが考えられなくなり、プロデューサーとしての視野が狭くなります。
逆に、離れすぎると、著者の個性・魅力・強みといったものが把握しづらくなり、企画もぼやけてしまいます。
だからこそ、適度な距離感を保つ。
ヤマアラシでいう、傷つけずに暖め合える距離でいる。
こういう意識を保つことも、出版プロデューサーの仕事であると、私は考えているのです。