防御こそ最大の攻撃なり
スーパーバイザー 倉林秀光
「攻撃こそ最大の防御なり」という格言があります。
サッカーや相撲等のスポーツの世界でよく使われる言葉なので、ご存知の人も多いと思いますが、殊、出版の世界においては、この言葉はいかがなものか……というのが私の個人的な意見です。
「この企画にはこういう特徴がありまして……」
「この企画はこういう点においてものすごく斬新です」
このように編集者にPRする段階においては、まさしく攻撃です。
しかし、編集者の質問に的確に答えられないと、どうなるか?
編集者が突いてきたことに対して、自分の意見がキチンと述べられないと、どうなるか?
形勢は一気に逆転。今度は攻撃する側から、攻撃される側へと転じるようになります。
企画が通らない著者を見ていると、攻撃しているときは威勢がいいのに、攻撃されると防戦いっぽうであえなく撃沈……というパターンが意外と多いような気がします。
「この企画はおもしろい……」
「この企画はいけるかも……」
そう思っても、編集者は必ず何らかのあらさがしをします。
言葉が悪いかもしれませんが、「重箱の隅をつつく」ことを生業としています。
このとき、著者が黙ってしまうようであれば、編集者との戦に勝ち目はありません。
そこで、私はコンサルを行ったり、企画書の作成を指導するとき、「攻撃などしなくてもいいから、とにかく防御を完璧にしなさい」とアドバイスするようにしています。
どういう質問をされても、的確に返答できるようにしておく。
編集者の疑問点を先読みし、突かれたときの対処策を講じておく。
こうしてこそ、初めて編集者と対峙できるわけです。
だからというわけではありませんが、私はコンサルで手厳しいことも言います。
耳の痛くなるようなことを口にする場合もあります。
プライドを傷つけることもあるかもしれません。
それもこれも、「防御こそ最大の攻撃である」という観点から、著者の武装を第一に考えているからなのです。