構成案で大事なのは「ストーリー」
スーパーバイザー 倉林秀光
漫画家の水木しげる先生がお亡くなりになりました。
その水木先生とは、過去、一度だけお会いしたことがありました。
当時の私は物書きとしてもまだ半人前。
この仕事で食べていこう……という自信もまだない頃です。
そんな私の心を見透かしたのでしょう。
私にこうおっしゃってくれたことがありました。
世の中には、漫画を描かせれば、私より上手な人はごまんといます。
だったら、私なんかより、食えるはず。
でも、現実は食えない。日の目を見ない。
その理由はね、彼らには漫画を描く技術はあるけれど、またいろいろな体験をしているけれど、それをストーリー化する能力がないからなんですよ。
大事なのはストーリー。
抑揚のある展開(起承転結に基づいた展開)。
倉林さんの仕事も同じだと自分は思うんですがねー。
水木先生のこの言葉を身をもって感じたのは、自分が二冊目の拙著『イヤな仕事は絶対するな!』(サンマーク出版)を執筆したときでした。
本書のテーマは天職中の天職“いのちの仕事”を見つけること。
そのために、言いたいこと、書きたいことは山ほどあります。
そこで一稿目の原稿を勢いで書いて、妻に読んでもらったものの、反応はイマイチなのです。
その理由を尋ねると、妻からこんな返答が返ってきました。
「よくあるノウハウ本みたいで、なんか面白味がない……。興味をそそられない……」
そう言われた私は妻(読者)目線で、自分が書いた原稿を改めて読みなおしてみることにしました。
すると、妻の指摘どおり、確かに面白味がありません。興味をそそられません。
なぜだろうか……。
そのことで頭を痛めていたとき、ふと、水木先生の言葉を思い出しました。
大事なのはストーリー。
抑揚のある展開(起承転結に基づいた展開)。
そうか。よくあるノウハウ本みたいで、面白味がないのは、流れにストーリーがないからだ。展開に抑揚がないからだ。
だから、興味がそそられないんだ。
そう思った私は、天職中の天職“いのちの仕事”をいかにして見つけ、どのように就くかということよりも、以下のようにストーリー(抑揚のある起承転結に基づいた展開)を重視することにしました。
【起】世の中を見渡すと、仕事に生きがいを感じることなく、ネガティブな人生を送っている人が多い。
【承】筆者(倉林)がまさにそうだったが、“いのちの仕事”を見つけ、それに就くことによって、人生を好転させた。
【転】では、“いのちの仕事”はどのようにして見つければいいか。どうすれば、就くことができるか。
【結】“いのちの仕事”がもたらしてくれる恩恵はこんなにたくさんある。
そして、それを基に再度書き直したところ、今度は妻からも「とても面白い」というお墨付きをもらうことができたのです。(もちろん、担当編集者からもです)
同じことは、みなさんにもいえます。
どんなに素晴らしいノウハウ・強みがあっても、それを羅列して、くどくど述べるだけでは、読者は面白味を感じないし、興味・関心を示してはくれません。
大事なのは、素晴らしいノウハウ・強みを強調するために、本全体の流れにストーリーを持たせること。
抑揚をつけること。
そして、伝家の宝刀――素晴らしいノウハウ・強みはここぞというところで打ち出し、読者の悩み・苦しみを希望・期待に転じるように誘導してあげること。
そのためにも、構成案はとても重要になってくるのです。