フェイスブックにご用心
スーパーバイザー 倉林秀光
以前、某商業出版社に「これはいける」と思った企画を売り込んだことがありました。
担当編集者も興味津津。
編集会議も無事パスするかのように見えました。
ところが、最後の最後、土壇場になって、見送られてしまいました。
いったい、なぜ?
つまり、こういうことです。
編集会議で「この企画はおもしろい」と賛同した人が三人。
「どうかな……」とクビをかしげた人が三人。
完全に拮抗していました。
そこで、編集長に最終判断が委ねられることになったのですが、編集長はあることを理由に「今回は見送ろう……」という結論に行き着いたらしいのです。
そのあることとは、著者のFBが関係していました。
「この著者はセミナーの宣伝が多すぎる」
「どうも客(セミナーの参加者)の入りが悪いようだ」
「ということは、セミナーそのものが、流行っていないのかもしれない」
要するにその編集長は、FBを見て、マイナスの印象を抱き、「この著者は発展途上のようだから、もう少し様子を見よう」と考えたみたいなのです。
この話はけっして他人事ではありません。
出版社の編集者が著者のFBをチェックする傾向は年々高まっています。
実際、私も企画を売り込んだ後、編集者から次のように言われることが少なくありません。
「FBを拝見しましたが、この著者はかなりの読書家ですね」
「FBを拝見しましたが、この著者は医学にも精通しているみたいですね」
ただ、中にはこう言ってくる編集者も……。
「FBを拝見しましたが、この著者は自慢話が多いですいね」
「FBを拝見しましたが、この著者は金儲け主義という感じですね」
そして、このようなマイナスのコメントが飛び出したとき、たいていの企画はボツになります。
前にもお話しましたが、編集者は企画の中味もさることながら、著者の人格――人間性を重視しています。
この人には優しさ、温かさ、謙虚さといったものが備わっているか?
愛と善意に満ちたオーラを漂わせているか?
私利私欲、自分のネームバリュー・アップだけのために本を出そうとはしていないか?
そういうことに疑問符がついたとき、編集者はその著者にマイナスの印象を抱くようになります。
その意味で、本を出したい人は、これを機に自分のFBを見なおしてみるのもいいかもしれません。