【自叙伝が不評なワケ】

スーパーバイザー 倉林秀光

あなたは自叙伝を読んだことがありますか。

自叙伝とは、自分の体験を時系列にまとめ、そこから印象に残るエピソード、特異な体験などを交えながら、自分の生きざまをまとめた本をいいます。

自費出版の一環として出す人も多く、ある程度年齢のいった方や、それなりに成功をおさめた方がよく出すことがあります。

ただ、この自叙伝、意外とどの本も不評みたいで、私自身、何十冊も読んだことがありますが、おもしろいなと思った本、印象に残った本は、わずか数冊だけです。

なぜか? 文章が下手、構成にまとまりがないなど、いろいろ挙げられますが、いちばんの理由は成功談がやたら目につくからです。

そう、自慢話が多すぎるのです。

○○の仕事に就いて、トップセールスマンになった。

年収○○千万稼げるようになった。

200坪敷地に豪邸を構えた。

夫婦でファーストクラスに乗り、あちこち旅している。

こんなことばかり書かれていたら、いい加減、うんざりしてきますよね。

読む気が失せてきますよね。

嫉妬心が湧いてくる人だっているかもしれません。

書き手を毛嫌いする人がいてもおかしくありません。

「自分だって苦労はしたが、今は成功したんだ」

読み手にそう思わせたい気持ちもわからなくはありません。

でも、成功談のオンパレードでは、書き手と読み手の距離は遠のくばかりです。

だとしたら、成功談を躍起になってアピールする必要はないと思うのです。

むしろ、失敗談を記してみてはいかがでしょう。

失敗はみじめなモノ、思い出したくもない。悔しい思いをしたし、バカにされそう。だから心の奥底に封印したい――そう思うかもしれませんが、殊、本に関してはいうと、ちょっと違ってきます。

失敗談を記すと、読み手は、書き手に対して自分の優位性を感じるため、好感を持つようになります。

それだけではありません。

「この人でもこんな失敗をしたんだ。それに比べると自分の失敗はたいしたことはない」

「こんな失敗をした人でも、今は充実した人生を送っている。自分も頑張ろう」

と、読み手は思うようになります。

それによって、安心感をおぼえ、自分の考え方・行動・生き方に自信が持てるようになるわけです。

失敗談のメリットは他にもあります。

今だから笑える失敗談、言い換えると自虐ネタを書けば、読み手を笑わせることになるため、読み手は書き手に対して親しみを感じるようになります。

共感を生み出します。

それによって読み手との距離感がグンと縮まるようになるのです。

本で自分の体験を書くなら、成功談ではなく失敗談。

まずはこれです。

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