パブラインについて
スーパーバイザー 倉林秀光
紀伊国屋書店にパブラインという売り上げデータがあります。
これは紀伊国屋書店がインターネットを通じて販売情報を公開しているサービスで、料金を払えば、誰でも見ることができます。
それによって、
「この著者の本は(紀伊国屋書店)、どれくらい売れているか?」
「この著者の本の読者は男性が多いか? 女性が多いか?」
「この著者の本を買う年齢層は、20代が多いのか? 30代が多いのか?」
といったことを知ることができ、出版社の多くはこうしたデータをもとに、今後の売り上げ予想や増刷の手配を行っています。
全国の書店も例外ではなく、このデータをもとに、「この本は売れているみたいだから仕入れよう。この本は売れていないみたいだから仕入れるのはやめよう」という判断をします。
ただ、このパブラインは著者にとっては、天使にもなれば、悪魔にもなります。
売れた本の著者ならば、このパブラインのデータをもとに、出版社はこう判断します。
「過去、この人の本は売れたから、また出してもいい」
それによって、二冊目・三冊目が出しやすくなるというメリットがあります。
ところが、売れなかった本の著者の場合、出版社はこう判断します。
「過去、この人の本は売れなかったから、ウチで出すのはやめよう」
そのため、どんなに素晴らしいノウハウがあっても、売れなかった本を過去に出すと、その著者の企画は通りにくくなるというデメリットがあります。
まさしく、天使でもあり、悪魔です。
ところが、今まで本を出したことのない新人著者の場合、ちょっと勝手が違ってきます。「売れた」「売れなかった」の実績がパブラインのデータにはないからです。
ということは、出版社も企画の善し悪しで、本を出すか、出すまいかの判断をせざるをえなくなります。
むしろ、企画が面白ければ、前向きに検討しようとします。
だから、ある意味、新人著者のほうが、本を出したけれど売れなかった著者よりも、商業出版社から本が出せる確率が高いのです。