編集者は著者略歴(プロフィール)のここを見る その1
編集者は著者略歴のここを見る その1
スーパーバイザー 倉林秀光
私の恩師に謝(しゃ)世(せい)輝(き)先生という人がいます。
謝世輝先生は台湾出身の歴史学者ですが、成功哲学研究のオーソリティとしても有名で、多くの本がベストセラーとなりました
その謝先生が初めて出した成功哲学の本(願望はゼッタイかなえられる こう書房 1980年刊)の著者略歴(プロフィール)の欄には次のようなことが記されています。
1929年、台湾に生まれる。1959年に名古屋大学物理学科大学院を卒業、理学博士号を取得。その後、ヨーロッパ偏重の科学史観に疑問を持ち、1970年より世界史研究へ再転進。新しい歴史観に基づく歴史・政経・科学の著述を続々発表する。一方、宗教・超心理学にも造詣が深く、その研究にも従事している。
先生は企画書に上記の略歴(プロフィール)を記し、出版社に提出したところ(当時はパソコンもワープロも普及していなかったため、手書きで書いたそうです)、編集者から即ゴーサインが出たというのです。
なぜでしょうか。その編集者いわく、「元物理学者――科学者が宗教・超心理学にも造詣が深いという点に良い意味でギャップを感じた。元科学者だった人が、宗教や超心理学をベースにした成功法の本を書いたら面白いに違いない」
今でこそ珍しくなくなりましたが、昭和の時代、科学者が宗教や超心理学を肯定し、その分野に入り込むのはタブーとされていました。
しかし、先生はそのタブーを犯そうとしました。
つまり、編集者はその点に魅力を感じたのです。「科学と宗教」というギャップに惹かれたわけなのです。
したがって、本を出したい人は、「なぜ著者が自分である必要があるのか」「自分でなければダメなのか」を明確にすると同時に、“あなたならではの良い意味でのギャップ”も意識するといいと思うのです。
出版社に提出する企画書(著者略歴の欄)で、そのことを強調するだけでも、企画がパスする可能性が高くなりますよ。