読者対象は狭めるな
スーパーバイザー 倉林秀光
今日は大手出版社の編集長が私に語ってくれた話を紹介しましょう。
まず、著者から提出された二つの企画があるとします。
一つは「I Phone6を使った動画集客術」。
もう一つは「簡単に作れる、安くて美味しいヘルシー肉料理50選」。
さて、皆さんなら、どちらの本を読みたいと思いますか。
このブログをご覧の皆さんなら、きっと前者のほうに関心・興味を寄せると思います。
しかし、その編集長が言うには、「編集会議で企画が通りやすいのは、スバリ、後者のほう」だといいます。
なぜか? それは後者のほうが、読者対象が広いため、売れ行きが期待できるからだというのです。
「I Phone6を使った動画集客術」。これは確かに魅力的なタイトルです。
しかし、I Phone6とうたった段階で読者はかなり限定されます。
同じスマホでもI Phoneでなければダメ。仮にI Phoneを持っていたとしても、6となると、さらに読者は限られてしまいます。
要するに、I Phone6を持っていることが、読者の絶対条件となってしまうのです。
それだけではありません。I Phone6を持っていても、動画に興味がなければダメ。動画に興味があっても、集客で悩んでいる人となると、ますます読者は限定されてしまいます。
では、「簡単に作れる、安くて美味しいヘルシー肉料理50選」はどうでしょうか。
まず、「簡単」「安くて」「美味しい」という言葉に、大半の主婦が魅了されます。
これに、「ヘルシー」という言葉が加わると、独身女性も魅了されます。
いや、自炊している人なら、男性も読者ターゲットとなりえます。
そうしたことを併せ考えると、前者の企画は読者対象を狭めているのに対し、後者の企画は読者対象を広げているため、結果的に売れるのは後者……という判断を、出版社はどうしても下してしまうのです。
もちろん、前者の企画が悪いといっているわけではありません。
しかし、読者対象を狭めてしまうと、どんなに素晴らしい内容であっても、企画が通りにくくなるということを、キチンと認識していただきたいのです。
ちなみに、「I Phone6を使った動画集客術」というタイトル――私ならば次のようにしますが(すべてのスマホで動画集客が可能になるという条件つきですが……)。
「営業はスマホがやってくれる」
「今日から、スマホはあなたのビジネスパートナー」
どうです? これならば、編集者に読者対象を狭めた印象を抱かれないと思うのですが。