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【置き換えの技術】

スーパーバイザー 倉林秀光

 

前回のブログで、企画書を作成するときは、専門用語や学術用語はできるだけ使わないように心がけ、小中学生が読んでもわかる文章、わかる内容にすることが大切になってくると、お伝えしました。

 

たとえとして、√9×√9みたいな書き方はしないで、はじめから、3×3と書くことの大切さもお伝えしました。

 

この点に気を配ったのが、先月、かんき出版から発売された占術家・小池雅章さんの著書『宇宙風水』の企画書です。

 

この本は、西洋占星術を正しく理解することで、太陽系の星々の作用をプラスに活用することの大切さを説いた本ですが、当初、企画書を作成するに当たって、私は大いに困惑してしまいました。

 

ど素人の自分からしてみれば、西洋占星術は大変奥が深く、難しかったからです。

ホロスコープ(その人の出生時間などを手掛かりに、生まれたときに太陽系の星々がどの方角をどのように運行していたかを知るための配置図)の見方ひとつとっても、まるでちんぷんかんぷん。

ちっともわかりません。もう完全にお手上げ。

 

そこで、著者の小池さんに次のようにお願いすることにしたのです。

 

先生、ボクを出来の悪い小学生だと思って、ホロスコープの説明をお願いできますか?

 

すると、小池さんのレクチャーの仕方がよかったのでしょう。

ホロスコープの見方がだんだんとわかってきました。

 

円の中心部分は、自分のいる場所、すなわち地球。

 

それを囲むように、円の外郭には牡牛座から魚座までの一二星座が並んでいる。

 

そこを、太陽、月、水星、金星、火星、木星、土星、天王星、海王星、冥王星の一〇個の星々が、速度がまったく違う列車のように、時計とは反対まわりに走行している。

 

小池さんから、こんな説明を受けることで、二人が行き着いたのが、ホロスコープをJR山手線(本では宇宙の銀河鉄道と記述)にたとえることでした。

 

こうした「置き換え」が功を奏したのでしょう。

難解な西洋占星術をテーマにした本であるにもかかわらず、わかりやすい企画書を作ることができ、最終的にはそれを原稿にも生かすことができたのです。

 

言うまでもないことですが、著者はその道の専門家。

専門家である以上、専門用語に精通しているのは当たり前のことです。

 

しかし、編集者(読者)はその道の素人。

専門用語を並べ立てられても、理解不能で困惑するだけです。

 

だとしたら、出来の悪い小学生に説明するかのように、企画書を書いてみませんか。

 

そうすれば、私と小池さんがホロスコープをJR山手線に置き換えたように、「これに例えてみると、わかりやすいかもしれない」と思えるものが、必ずアイデアとして湧いてきます。

 

この「置き換えの技術」を身につけることが、企画書、ひいては本文を作成するにあたっての命綱となってくれるのです。

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