新人著者が編集者に売り込むときに注意したいこと
スーパーバイザー 倉林秀光
今回は私の失敗談を紹介しましょう。
もう10年以上も前のことですが、私はある新興宗教団体から「マーフィーの成功法則」をテーマにした講演依頼を受けたことがありました。
私はその新興宗教の信者でもなければ、関係者でもなかったのですが、知人を介して、オファーがきたのです。
ちょうど、恩師の勧めもあって、「マーフィーの成功法則」の本を出そうと考えていた私は「これは出版社に売り込む際の良いPR材料になるかもしれない」と考え、二つ返事で講演依頼を承諾しました。
そして、ちょうどビデオ録画するということで、それをダビングしてもらい、当時、マーフィー本の企画を検討してもらっていた出版社に、DVDを送ることにしたのです。
ところが、これが仇となりました。
間もなくして、出版社の編集者から「今回の企画は見送らせてください」という連絡がきました。
なぜでしょうか。
実は、その新興宗教団体から、事前に「マーフィーの成功法則を講話するとき、ウチの教義も織り交ぜてしゃべっていただけますか」という要望がありました。
そのことを踏まえて講話したため、結局、「倉林さんのマーフィー理論は○○宗教団体の教義に則ったもので、オリジナリティがない」という印象を編集者に植え付けてしまったのです。
その後、間もなくして、私は別の出版社から「マーフィーの成功法則」をテーマにした本を出すことに成功するのですが、この話はみなさんにも少なからず参考になると思うのです。
著者の中には、出版企画書の他に、自分のPR材料として、自分が講師を務めたセミナーや講演会の動画を編集者に渡そうとする人が少なくありません。
自分が主宰するセミナーならば、100パーセント、自分の考えが打ち出せるため、まったく問題はありませんが、私のケースにもあるように、別に主宰者がいて、主宰者の意向を反映させたセミナーだと、自分のオリジナリティが薄れてしまう可能性があります。
いや、一歩間違えると、「結局、この人の言っていること、考えていることは、受け売りに過ぎない」ということで、編集者にマイナスの印象を抱かれ、企画そのものがボツになってしまう可能性があります。
したがって、本を出したい人は、動画に限らず、むやみやたらとPR資料を編集者に渡さないことです。
「これを編集者が観た(読んだ)場合、かえってマイナスになってしまわないだろうか」
そういった慎重さを併せ持つことも大切になってくるのです。