ロックのアルバムに学ぶ
スーパーバイザー 倉林秀光
今回はロックアルバムの話題を少々。
私はロックを聴くのが大好きです。
レッド・ツェッペリンやディープ・パープルやブラック・サバスといったハードロックがとくに大好きです。
そんな彼らの名盤と呼ばれているアルバムをよく聴くと、「本当に素晴らしい曲だな」「この曲はものすごくいい。興奮してくる」と思える曲は3曲くらいしかありません。
そのことに確信が持てたのは、ローリング・ストーンズのシンガーであるミック・ジャガーが雑誌のインタビューでこう語ったのを知ったときでした。
「どんなに素晴らしいロックのアルバムでも、本当にいい曲は、10曲中、3曲くらいしかない。僕たち、ローリング・ストーンズのアルバムもしかり。全部、いい曲が入っているアルバムなんて、ビートルズぐらいだ」
10曲中3曲、素晴らしい曲が入っていれば名盤。
これは本にも同じことがいえると思うのです。
一冊の本を書き著わそうとするとき、著者は往々にして、自分の持てるノウハウのすべてを投入しようとします。
その姿勢はもちろん大切ですが、「全編にわたって、あれも記そう。これも記そう」だと、情報があまりにも膨大になるため、著者が一番強調したい部分――最大の強みといったものが、読者に的確に伝わらなくなることがあります。
より正確に言うと、読者は読んでいて、情報の収集作業に疲れてしまうため、「いまいち要点がつかみづらい」で終わってしまうことがあるのです。
そうならないためには、良い意味で“遊び”の部分が多くてもいいと思うのです。
そして、著者が一番強調したい部分――最大の強みは3割程度にとどめおくのです。
たとえば、今までにないストレスの解消法をうたいたければ、「起」と「承」で、遊びの部分を前面に出し、自分の強みは最小限にとどめる(全体の0.5割)。
その代わり、核となる「転」で、自分の強み、すなわち今までにないストレスの解消法をバーンと打ち出す(全体の2割)。
「結」で、遊びと強みを交錯させながら、全体を締めくくる(全体の0.5割)。
すると、全体の流れに抑揚がつきます。
著者がもっとも強調したいこと――著者の強みといったものが、読者にも的確に伝わるようになります。
ストレスを解消するために、何が重要であるか、そのポイントがつかみやすくなります。
出版企画書の構成案を作成するときは、ロックアルバムの名盤を見習い、そういうことも念頭に入れるといいかもしれません。