【これを書くと危険! その2】

スーパーバイザー 倉林秀光

 前回、本を書くにあたって、むやみやたらに著名人を実名で出さないほうがいい。
 スキャンダラスな問題を起こすと、社会的な信用やイメージが大きく損なわれ、それが本にも影響を及ぼしかねない。

 また、特定の経営者の成功法則をテーマにした本を出すときも、慎重を期したほうがいい。
 その経営者の会社が倒産しようものなら、誰もその本を読みたいとは思わなくなる。

 私はこう述べました。

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 実は他にもご注意いただきたい点があります。

 今回もまず事例から紹介しましょう。

 Bさんは38歳の女性で心理カウンセラーです。
 自らもうつ病になり、それを克服したことから、うつ病の治し方をテーマにした本を執筆したのですが、全6章のうち、1章まるまる、編集者からクレームがついて書き直しを余儀なくされたことがありました。

 いったい、その章のどこに問題があったのかというと、それはある新興宗教によって救われたことを記したことが関係していました。

 新興宗教によって救われたこと自体を書くことは、さほど問題はないのですが、編集者がクレームをつけたのは、その宗教団体のPRを長々と記した点にありました。

 私はこの宗教団体の教祖のこの教えによって救われた。
 だから、読者もこの教えを信じたほうがいい。

 このように、あたかも入信をうながすような記述をしたほか、巻末に宗教団体のURLまで記していたのです。

 言うまでもないことですが、日本には信教の自由というものがあります。

 それをないがしろにして、特定の宗教団体のPRをすると、宗教をまったく信じていない読者や特定の宗教を信じている読者に、違和感や不快感を読者に与えることになります。

 また、宗教団体に限らず、特定の商品をPRする記述はURLの記載を含めNGです。

 これは本の中に広告を入れるようなもので、それをやってしまうと、読者は「この本は宣伝のために書かれているのではないか」と感じてしまい、著者への信頼を損なう原因となるからです。

 Bさんが編集者から厳重に注意され、ある部分を書き直しさせられ、大変な思いをした理由がこれでおわかりいただけたのではないでしょうか。

 本はあくまで自分の意見・ノウハウ・メソッド・知識といったものを伝えるためのもの。

 特定の誰かを称賛したり、何かを宣伝するためのものではありません。

 それをないがしろにすると、本の価値そのものが低下してしまい、知識や文化の価値が損なわれる可能性があります。
 
 本を出したい方は、そのへんのことをくれぐれも忘れないようにしてください。

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