【本が売れたらこうなった その1】

スーパーバイザー 倉林秀光

 私が初めてブックライティングの仕事をしたのは、1987年、脱サラして、起業した年でした。

 終生の恩師・謝世輝先生の人生論の著書です。

 謝世輝先生は台湾出身の歴史学者で、東海大学の教授を務めた人物。成功哲学の研究にも取り組み、1980年以降は数多くの自己啓発書を執筆し、その多くがベストセラーとなりました。

 先生は当時ライターを使わず、すべて自分でお書きになっていましたが、私のためにブックライティングの機会を与えてくださったのです。

 ご多分にもれず、その本も大ヒット!

 当時は今と違って、初版は1万部刷るのがあたりまえで、この本も初版1万部からスタート。

 そして一週間後には重版が決まり、5000部の増刷。

 そのまた一週間後にも重版が決まり、今度は1万部も増刷。そのまた一週間後にも……。

 しかも、ありがたいことに、当時は重版の印税も刷り部数方式で支払ってくれるので、重版した翌月には出版社から印税が支払われます。

 それだけではありません。

 数カ月後、これまた私の手がけた別の本も大ヒットし、こちらも毎週のように重版出来。

 毎月、100万円前後のお金が入ってくるようになりました。

 仕事をしなくても、毎月100万が入金。先々月も先月も今月も来月も……。

 しかも、起業の翌年あたりからは、企業案件もどんどん増えていき、そのお金も入ってきます。

 そうなると、経済観念が麻痺してきてもおかしくありません。

 私の場合、この状態がずっと続くものと錯覚を起こしてしまい、必要経費と偽って、いろいろなものを買いあさるようになりました。

 オーディオ機器が古いので新しいのを買おう。これは備品費として経費で落とせるな。

 海外取材と偽って、ハワイ旅行も経費で落としてしまおう。

 たまには高級寿司店に行きたいな。よし、この飲食は交際接待費だ。

 挙句の果てには、スポーツカーまで購入。そう、高市総理と同じスープラです。

 いよいよ、オレも成功者の仲間入りだな……。

 そう思い始めたあたりから、今度はマイナスの連鎖が生じるようになったのです。

つづく

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